合気道天照会

大東流と岡本先生の合気について



岡本先生と合気の出会いから合気習得まで
合気上げについて
合気下げについて
触れ合気と踵が上がる事について
岡本先生の合気を次の世代に伝える
円と呼吸と条件反射について

岡本先生と合気の出会い

鏡開きにて
私が大東流について知ったのはまだアメリカで合気道を学んでいる時でした。そこで新しく入った門弟が岡本先生の六方会に所属している人で、当時はアメリカのセミナーのビデオをDVDにして欲しいと頼まれたのがきっかけでした。しかしその時はまだ映像を見ながら不思議な技だなーと思うぐらいにしか感心が無く、不覚にも余りにも退屈でダビング中に寝てしまいました。

その後黒帯を取得し10年にも及ぶアメリカ生活に終止符を打ち日本に帰ることを決めた際、その友人に日本に帰ったら岡本先生に教わると良いよと薦められました。

2006年の正月に日本に帰国し、さほど興味も無かったのですが友人の進めもあって、六方会に入会しました。そして稽古初日に私の想像を遥かに超えた技を受けて閉口し、その日から岡本先生の合気を習得するという新たな目標が生まれました。

週三回の稽古は一度も休まず参加し、稽古が終わった後も他の仲間と時間一杯居残り稽古を続ける日々が続きました。本部では珍しく欠席を一切しないで熱心に練習する私の様子が先生の目に留まったのか、居残り稽古をしている時や稽古が始まる前などに、様々な注意やアドバイスをいただきました。それはもう学者の様に、先生の映像を調べたり、過去の雑誌の記事を調べたりと岡本先生の合気を研究する日々が続きました。幸い英語が喋れたので、海外への遠征にも同席させて頂ける事もありました。この時の飲みの席で、先生とアメリカ人数名と外で飲んでいる時に、涙ながらに大戦時代にゼロ戦の整備をし、同世代の青年を特攻に送り込んでいた話を僕にしてくれた事は今でも忘れられません。技以上に大事な物を受け受け取り、それをまた後世に伝えなければと思いました。

入門して3年目、もう直ぐ三段になろう言う時に岡本先生とある「約束」をし、六方会を去ることになりました。先生の下での合気の研究を終え、術理を理解した今、合気の技の精度も先生に近づけそして何時の日か師匠を超える技を弟子達に伝えて生きたいと思っています。もちろん、術理を理解したからといって、それは今まで目隠ししてバッティングセンターでボールを打ってたのが、目隠しをはずせるようになったに過ぎません。これからは、大リーグのボールでも先生のように打てるように練磨していくだけです。

2015年1月に、岡本先生は永眠されました。先生の技を私が理解下範囲で、弟子に伝えて行きたいと思っています。

もちろん、私は特別な寵愛を受けたわけでも無く、段位も二段で別に免許皆伝を授かったわけでも有りません。ですから先生の後継者を名乗るつもりもないですし、大東流すら名乗るつもりもありません。

合気習得までの道のり

本部の稽古風景
私は岡本先生から情報得るためにありとあらゆる手段を使いました。先生は技は教わるのではなく盗めというスタンスだったので、確信に触れるような事は一切稽古中及び飲みの席では教えてくれませんでした。では何をしたかを書いてみます。

友達を見学に連れて来て先生に話しをさせたり技を受けさせました
本部所属の自分にとって岡本先生の技を受けた事のある人と研究する事は出来ませんでした。そこで道場に友達を見学させて、先生の技を受けさせました。先生は気分が良いときは見学者に細かい話をするだけでなく、技をかけてみたりします。そこで自分の門弟を連れて行き、先生の技を受けてもらう事で自分でも研究できるように計らいました。友人を3回ほど連れて行き、その内2回は先生の技を何度も受ける事が出来たために後日の研究に大きく役立ちました。

またこの見学時には、自分の技を客観的に先生が評価もしてくれました。これもまた己の状態を知るためには有効でした。先生が私の友人に対して「六方会の技を知りたければ彼の技を見れば良い。彼は私の技を理解しているから。」と間接的に褒められた時は嬉しかったです。


その友人と合気技を研究している様子です。

先生には正しい質問をする
岡本先生がモデルになった映画「Aiki」で、こんな台詞があります。「正しい質問には必ず答えが含まれている。」先生は、あまり考えもせず答えだけ求める質問を極端に嫌いました。よく、他の門弟が「先生、呼吸はどうすればいいんですか?」とか「合気上げはどうすれば良いんですか?」みたいな質問をしていたのを耳にしました。こう言った質問を受けた時先生は必ずお茶を濁すような答えしかしませんでした。

しかし、先生自身がその「Aiki」のような事を堀川先生相手にしていました。いつか先生が「堀川先生は、月に一度ぐらいしか、教えに来てくれなかった。そこで何時も私は考え抜いた質問を2つだけする事にしていた。3つは多すぎると怒られたが、堀川先生は2つまでは質問に答えてくれた。」とおっしゃってました。これをしってか知らずか、私も同じように、月に一回ほど道場から出てくる先生を待ち伏せし、考え抜いた質問を一つか二つする事を心がけていました。大事な事は質問の中に答えがある事でした。つまり、「呼吸をするタイミングはあれこれこのタイミングで、息を吸い吐けばよいのですね?」と具体的な質問をし、先生に答えの確認をする質疑応答をするのが大事でした。すると先生は必ず質問に答えてくれました。あっている時はそれで正しい。間違っている時は、違うこうするんだと。

先生は、合気習得の為に物凄い研究と稽古を重ねたお方です。ですから、弟子の安易な質問(なになにを教えてくださいの様な)を極端に嫌っていましたが、このようにちゃんと「正しい答えが含まれた質問」をすれば必ず答えてくれました。六方会を去る直前にある重心についての質問をした時に、「よくぞ奥義に気がついた。その奥義を隠すために、大東流では袴を履くんだ。」と応えてくれた時は最終的な術理への大きな一歩となりました。

先生の練習方法をさぐり真似する
大東流の技は一人稽古するのが難しいですが、実は技に関しては幾つか稽古する方法があります。先生が笑い話のような稽古方法を話したときに実際はどのような稽古だったのか私は真剣に考えました。幾つか有りますが、その一つに一升瓶を使った稽古方法があります。これは秘伝でも先生が雑談で話していますが、これは実は物凄い重要な稽古方法で、先生はかなり真剣に実践していたはずです。大のお酒好きであった岡本先生が一升瓶で稽古したとなると、殆どの人は冗談だと思ってしまいます。一升瓶を使った正しい稽古方法を自分で見つける事が出来れば、一人稽古でも十分に稽古できると言う事を理解しする必要があります。

この一升瓶の稽古以外にも様々な道具を使って合気の一人稽古を編み出しました。今後は自分の弟子にその方法を伝え彼らにも岡本先生の技を出来るようになってもらえるよう指導していきたいと思います。



合気の話はいろいろと物議になるのでここでの記載は細かくは控えます。合気の定義もあくまで岡本先生の合気に限ります。大東流には様々な派があり、それぞれが違う解釈をしていると思います。ここで僕が話すのはあくまでも岡本先生の合気です。個人的には佐川先生はファンで、尊敬しています。もちろん、技を受けた事も見た事も無いので技そのものの評価は出来ませんが、佐川先生の逸話は好きです。また、僕が伝承した岡本先生の合気の技は僕の弟子に伝えたいものであって、世間一般に広めたいとも思ってません。弟子に対しては全て伝えるつもりです。術理は理解しているので、ちゃんとシステム化してしっかりと後世に伝わるようにしています。ただ岡本先生の説明する術理について幾つか正しく理解したほうが良いと思う事だけここでお知らせしようと思います。

神秘的な要素は一切無し
合気の技は科学的な物で、気などの要素は一切ありません。岡本先生の技はビデオなどで見ると非常にインチキに見えてしまいます。特に何人もの人間が先生に触れてもいないのに続けて倒れたりしますが、これは科学的に全て説明できます。説明できなければ術理を理解したとは言えないでしょうし。この不思議な伝わる技、また耳や髪などでも投げれるのも全て化学的な要因で行われており、合理的に出来ています。よくもまあこんな誰も考えない合理的な技を作ったと関心します。また色々な研究者が予定外のところから力が来たら反応できないと説明していますが、そんなの当たり前ですし、岡本先生の合気にはまったく関係有りません。テレビなどの映像がYoutubeに流れていてもっともらしく説明していますが、少なくとも岡本先生の合気には関係有りません。

基本的には円・呼吸・条件反射で構成されている
岡本先生は合気は円・呼吸・条件反射と説明しています。そしてこれ以上の要素は有りません。大事な事は、それぞれが何を指しているかです。別に合気に限った事ではありませんが、重心を崩すのに円や条件反射は重要ですが、もちろんそれだけではありません。その中でも呼吸は物凄い重要な要素で、もっとも軽視されている要素でもあります。これは偶然ですが、岡本先生はかなりのヘビースモーカーであり、僕もタバコをヘビースモーカーだった時期があります。呼吸しろと言われて、タバコを吸わない人は横隔膜を自在に操る事が出来ません。みんな息を吸っているつもりですが、実は肺には空気が入っておらず呼吸していないのが実情です。呼吸について自分の呼吸を理解してみる事をお勧めします。私はヘビースモーカーであったために息を吸う能力と、大のカラオケ好きであった為に息を吐く能力が六方会内ではずば抜けて優れていました。正しいだけでなく、自在に呼吸を操れた事が合気の技をより早く習得できた事に貢献しています。これはまったくの偶然です。合気道の塩田剛三氏もヘビースモーカーであった事実を考えると、喫煙による呼吸の鍛錬は合気では重要かもしれません。もちろん、お勧めはしませんが。

円は先生は「のし」と説明していました。円は技を構成する動きの要素であり、効率的に相手のバランスを崩す効果もあります。しかし、実際はもっと奥が深いです。先生の技をしっかり見ればおのずと円の動きが最終的に何を目指しているか、見えてくると思います。ちなみに、「のし」の動きに意味はまったく有りません。忘れても大丈夫です。

条件反射は、正確には反射です。これも崩しの為には重要な要素ですが、ある条件下で起きる人間の反射を指しています。このある条件下を理解し、巧みに使う事が重要であり、この条件には呼吸も大きく影響します。何時息を吸って何時息を吐くか。何故息を吸うか、何故息を吐くか。円はどのタイミングで作り最終的に何を目指すのか。これが理解できると術理が見えてきます。

合気上げの練習の意味
合気上げはもっとも重要な稽古です。しかし、相手を上げる事にまったく意味は有りません。岡本先生も親指を中心に手首が下がると説明していますが、これはあくまで形を説明しているのであって正直合気の稽古という意味はまったく有りません。先生は手首が攻めていくと説明していましたが、これも動きの指針を表す結果論であって、合気そのものの説明にはなんら影響はありません。合気上げは、相手を上げるのでは無く相手が上がる稽古です。力学的説明や角度などまったく意味は有りません。

合気上げの稽古で無理やり押さえ込んでるのを上げればいいとか、押さえ込めば合気がかかってないとか、非常にピントがずれてて無意味です。合気上げの稽古は基本中の基本で初心者が合気を理解するのに重要な稽古です。押さえ込んでる相手を上げる稽古をしているなら、僕の観点からすると余り意味が無い稽古に思われます。もちろん、合気自体は個人の解釈なので何が正しいくて何が間違っているというのはありませんが。